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  • 2016.08.26 Friday
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デパートの屋上、少年、袋いっぱいのヌイグルミ。

年末、師も走るという12月は出版業界にとって一年で一番厳しい時期。
いつもはヒマぶっこいてる貧乏デザイナーも容赦なく駆り出される、まさに修羅場。
売れっ子の先輩デザイナーがハードワーク過ぎるらしく、緊急代打として
飛び込みの仕事を斡旋していただき、今週だけで何個〆きりがあるのか数えるだけで、
あり得ない事態にガクブルしてしまうPOOでございますが、
息抜きにいつものようにJUGEMを覗いてみると、ジュゲムユーザーが共通のお題で
記事を書くジュゲム専用のお遊びシステム・トラックバックBOXのテーマが
「ゲームセンターにまつわるアレコレ」というではありませんか。
時間がいくらあっても足りねぇ!という、こういう時にいつも思い出す記憶があって、
それが今回初めてトラックバックBOXに挑戦するPOOにとっての、
「ゲームセンターにまつわるアレコレ」。

すでに前置きが十分長いですが、本文も負けず劣らず十二分に長いです(爆
お暇な時に流し読み、してみてくださいませ。
もう、かれこれ13年は昔の話になりますでしょうか?
大学をタテではなく、ヨコに出てしまったPOOは、学生じゃないのならとりあえず
働かにゃならん!ということで、デパートの屋上でアルバイトする事にしました。
いわゆる「屋上遊園地」というやつですな。当時、大阪の実家に住んでましたが
今のように、大形店鋪のゲームセンターなどなかった時代でしたから、
デパートの屋上とはいえ、テレビゲームやUFOキャッチャー、カードダスの類いから、
バッテリーカーや子供汽車、エアートランポリンなど様々な遊具があり、
土日や祝日などは、従業員も10名ぐらいが総出で2交代勤務するほどの大盛況。
ただ、子供向けに作られていたのもあり、平日の昼間なぞはガラガラの閑古鳥が鳴き、
3人もバイトがいれば所長(そこは営業所という形だったので、店長じゃなくて所長)に
どやされて早上がりさせられるくらい、それはそれは暇なものでした。

ちょうど今くらいの季節、平日の昼間。
北風がふきっさらしのデパートの屋上で遊ぶ子供なぞいるわけもなく、
僕は倉庫とUFOキャッチャーを新入荷のアンパンマン・クリスマスバージョンを抱えて
行ったり来たりしながら、ぬいぐるみを詰め替える作業をしていました。

ちと話が脱線しますが、UFOキャッチャーのヌイグルミって原価いくらか知ってます?
まぁ13年も前の話だから今ではどうかわかりませんが、
フェルト製のちゃっちいヤツでだいたい22〜25円、通常は30円くらいなのですよ。
んで、その時詰め替えていたアンパンマン・クリスマスバージョンは、
1コ70円という高値で作られているらしく、それはそれは良い出来。
そしたら、その試作品を見た所長が仕入れの時に、
「こんな素晴らしい出来なのだから、これを目掛けて子供は殺到するに違いない!」と
鬼のように山盛りで注文しやがりまして。180コ入り段ボールケースを50箱。
9000コ!!?んなアホな!!!そんなに捌けるかいっ!と、バイト連中から非難轟々。
おまけに、今回は単価が高いから、お客には300円使わせて(当時1プレイ100円)
1コ取れるか取れないか、というヌイグルミの積み方をしなさいと。
僕はだいたい、へそまがり(かっこよく言うと子供の味方)ですから、
そんな訓示は右から左、いかに連鎖して次々穴に落ちてマグレで取れちゃうか?
なんて積み方を日々研究して編み出していたので、まぁ所長には睨まれておりました。

そんな訳で北風ピューピューの中、ストーブのついた暖かい事務所を追い出され
鼻水垂らしながらクリスマスまでにどう考えたって9000コも完売するわきゃね〜よな?
と、真っ白い袋を担いだアンパンマンとバイキンマンにぶつぶつ話し掛けていました。
そんなアブない人間の見本のような僕が、ふと視線を感じて振り向くと、
UFOキャッチャーの陰に、一人の少年がいるではありませんか。

青い子供用リュックサックを背負って、水筒を肩から斜にかけていました。
小学生、それも低学年だよな〜どうみても。はて?
ん〜〜遠足の帰りなのかしらん?でもまだ昼前だぜ、おいおい。
…まさか、家出?いやいや、小奇麗な格好してるからそうじゃなさそうだし…。
ヌイグルミ相手に営業計画を相談していた、アブない僕は自分の事は棚に上げて、
チラチラとその少年を観察していましたが、少年はジーッとUFOキャッチャーに
うず高く積まれたアンパンマンを、目をキラキラさせながらみつめております。

『ほほぅ、どれが取りやすいのか見てるのかな?ならば我が奥義を見せてやろう!
 これで一番上のヌイグルミを動かせば、たとえそれが取れなくても
 その下、2コまでは確実にすぐ横の穴に自動的にすべり落ちてゲット出来る、
 名付けて、アルプス雪崩れ注意報・お嬢さん山男には惚れるなよパート2!!
 むはははは、少年よ、存分に取るが良い!』

んなアホな事を頭の中で高らかに叫びながら、UFOキャッチャーの窓を閉めて
別の機械の様子を見るフリしながら、少年の様子をうかがっておりました。
もう、取ってくれと言わんばかりの積み方に、目をさらに輝かせながらも
その少年は100円硬貨を投入する気配がまったくありません。
はて?

『うぬぬ、おぬしはまさかこの積み方ではまだ足りぬというのか!?
 で、できる!手強い相手には、ワシも究極奥義を見せねばならぬ時が来た!!
 ならば、この山を崩せば穴の周囲に半分落ちかけた4つのヌイグルミを巻き込み、
 最低でも7コ同時ゲット出来るという、ワシが苦心の末に編み出した秘奥義
 名付けて、花びら大回転万華鏡乱れ咲き・堕ちる時はみんな一緒に地獄へゴー!!!
 以前一度これをやって所長にクビにされかけて反省文書かされた最終奥義、
 こ、これでどうだ!?』

少し肩で荒い息をしながら、またまたUFOキャッチャーの窓を閉め、
今度は少年にわざと、「はい、もうお金入れてやっていいよ〜」と声を掛けてみました。
小走りで近付いて、とんでもない状態のアンパンマンの山を見ながら、
うわぁっ!と控えめだけど、嬉しそうな歓声をあげる少年。

うむ、子供は素直に喜ぶものじゃ!
さ〜て、所長にどやされるまえに仕事しよ〜とその場を離れかけたのですが、
どうにも少年に動きがない。 
お金を入れる気配がないのです。

真冬の平日。お昼前。場違いなリュックサック。水筒。
どうにも気になって話し掛けてみました。やらないの?今なら凄い取れるよ?
すると少年は少し恥ずかしそうに、でもアンパンマンから目を離さず、
「お母さんから100円しかお金もらってなくて、さっき1回やっちゃったから…」と
言うではありませんか。

さっきまで巡回してたのは…太鼓持ちのヤマザキじゃね〜か!
このヤマザキ君とは、渋チンの所長お気に入りのバイトでありまして、
UFOキャッチャーのヌイグルミを、わざと腕と足を噛み合わせて取れない様にして
お客に何度も挑戦させてお金を使わせる、利益至上主義者でPOOの天敵でありました。
この少年は、その卑劣なヤマザキの罠にハマってしまった犠牲者だったのか?

貧乏長屋に住んでいたPOOは、100円しかお小遣いもらってない少年への同情と
天敵ヤマザキ憎し、てめえの浅はかな魂胆なぞブッ潰してやる!という敵愾心で、
速攻でクレジットボタンを連打、カウンターを20くらい廻してから
少年にキャッチャー開始するように告げました。
ヤマザキに負けるな!
なんだか最後のよく解らない激励にも、素直にうなずきながらアームを動かす少年。
ボロボロとアンパンマンが穴に落ちていきます。ドキンちゃんも道連れです。
少年はその度に小さく、「うわっ」とか、「ひゃっ」とか言いながら大熱中。

いや〜イイコトしたなぁ〜俺♪なんて思いながら、カードダスの補充をしていると
両手いっぱいにヌイグルミを抱えて少年が走ってきました。
おおっ、たくさん取れたじゃんか!よかったね〜、それ入れる袋あげようか?
それともそのリュックサックに入れて持って帰る?
そう尋ねるPOOに少年は、なんと驚いた事に90度以上に体を折り曲げて
「ありがとうございました!これ、返します…」と言うじゃあ〜りませんか!?

ええぇっ?入らないの??いいよ、自分で取ったんだから持って帰りな!
「お母さんが心配するから。今からおばあちゃんトコ、行かなきゃいけないし」
いやいや、心配はしないよ?お兄ちゃんからもらったって言いな!
おばあちゃんなら、尚のコト嬉しいんじゃね?孫の喜んでる顔みたらさ?
「ううん、お母さんのお母さんなんだけど、僕のコト嫌いみたいだから」
ちょ、ちょっと待てぇ!なんかヘビーな話っぽいな、オイ!?ゆっくり聞かせてみ?
まずボクはどこから来たの?今日は学校行かなくていいの?
「僕の名前は○○○○で、ヨナゴから来ました!○○小学校2年生です!」
ヨナゴ?よなご………米子!鳥取県か!?それはまた、随分遠い所から来たな〜!

たどたどしい少年の話を要約すると、こうでした。
・その年の夏にお父さんが死んだ事。
・父親がいなくなって、生活が苦しくなった少年の母親は
 自分の故郷である大阪に今も住む、自分の母親を頼ろうと思った事。
・でもどうやら両親は駆け落ち同然で飛び出したらしく、今でも許されてない事。
・父親の家系は断絶しているため、頼る者が自分の親しかしない母親は、
 せめて孫だけでも預けたいと思って、夜行列車に乗ってお願いにきた事。
・少年はたったひとりの母親と離れるのが、とてもイヤで昨晩泣き明かした事。
・今、母親は実家に挨拶するのにデパートに手土産を買いに来た事。
・その間、屋上で待ってなさいと言われた事。
・でも貧しい暮らしだから100円しかもらえなかった事。
・ホントはその100円でジュース飲もうとしたけど、お母さんに
 クリスマスプレゼントとしてUFOキャッチャーでヌイグルミ取ろうとした事。
・結局取れなくて、でもお母さんにあげたくて、
 どうしていいかわからなくなってた時にPOOがやってきて積み直ししてた事。
・たくさん取れたのは嬉しいけど、
 もしかしたら今日から母親の実家で生活しなくてはならないかもしれず、
 お母さんが嫌いなおばあちゃん=自分も嫌われているハズだから、
 きっとこのヌイグルミも捨てられてしまうと思った事。
・だったら、ちゃんと返した方がいいと思った事。
・リュックサックには着替えとかが入ってるので、ヌイグルミは入れられない事。

もうね、小学2年生がたどたどしい言葉でこんな話した日にゃぁ、号泣ですよ?
そこでPOOはもう感極まって感情が大暴走、
ありとあらゆるゲームのクレジットを連打してその少年を連れまわして遊ばせました。
UFOキャッチャーも全種類のヌイグルミ取り競争とか2人でしたりして。
その最中、ついついこんな事を語ってしまいました。

なぁ、今日は風が冷たいっしょ?
世間ってのも、こんな今日のデパートの屋上みたいに冷たい時もあるのよ。
でもね、心まで冷たくなっちゃいかんのよ。
寒い時は手と手をこすって暖めるでしょ?
あれと一緒で、色んな人に冷たくされた時こそ、
お母さんと2人、寄り添って暖めあっていかなきゃ。そしたら寒くなくなるしさ。
男の子だろ?お母さんをあっためてあげな。だからヌイグルミ、持って帰れ。
それが捨てられるとか、そんな事は問題じゃないんだよ、ホントは。
その持って行ってあげる、その事自体がお母さんにとっては、
とてもとても暖かくなる事なんだ。
今はわかんなくてもいい。大きくなったらきっとわかる時が来る。
その時に、もし、デパートの屋上とか、ゲームセンターとかで働いていたら、
自分みたいな子供が来た時に、そっとヌイグルミを取りやすくしてあげな。
そしたら、そのコが自分のお母さんにあったかいモノを持って帰れるんだから。
な、約束だぞ?

遊び尽くして、取れたヌイグルミも30コぐらいになったでしょうか。
もう両手でも持てない数になっていました。
業務用の袋に入れさせて、待ち合わせの時間が来た少年に持たせてやりました。
何度もおじぎをする少年。よっぽど良い両親に育てられたんでしょう。
母子家庭なのに、真直ぐ成長する少年に、またもらい泣きしそうでした。

何泣いてるんだよ、POO。女に振られたのか〜うひゃひゃ。
ヤマザキ君が事務所から出てきて、冷やかしますが思えばこいつのおかげで
あの少年と触れ合えたようなもんだから、その日だけは素直に感謝。
いやいやいや、これは寒いからさ〜、雑巾がけしてるしさ〜と言って追い返し、
続けて掃除してるトコにその少年を連れた母親が飛び込んできました。
何度も何度も頭を下げられましたが、照れ臭かったし、いえいえ〜しか言えないPOO。
思わず、そちらこそ頑張って下さいって言ってしまって怪訝な顔されたのは内緒だ。

何度も振り返りながらおじぎをする母親と、必死に僕に手を振る少年。
青いリュックサックの上から、背中に背負った業務用の袋。
外から中が透けて見えない、その白い袋はサンタさんが担ぐアノ袋になんだか似てて。
原価70円のヌイグルミが30コ。2100円のプレゼント。
小さなサンタクロース。

その日大阪には、その冬初めての雪が降りました。



あれから13年。
あの少年はもう二十歳。
ちょうど、僕があの屋上デパートでバイトをしていた歳になったのかな。
あれっきり二度と君には逢わなかったけど、今は何をしていますか?
もうすぐ、君に逢ったあの日になります。
あの日、君が一生懸命担いで帰った、あの真っ白な袋。覚えていますか?
あの時袋にたくさん入っていた、あの時の気持ち。
今度は君が、誰かのために配ってあげてください。
今年は君が、サンタクロースの番です。
では、よろしく。

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コメント
心が暖まりました。
ステキなお話です。
  • さち
  • 2017/04/24 11:58 AM
>さちサン

どもども、コメントありがとうございまっス!
返信遅くなりまして申し訳ないっス。

いやぁ、お恥ずかしい(苦笑
12年前にはこういう記事も書いたなぁ、という気持ちと、
よくも12年も前の記事を見つけたなぁ〜という気持ちが混ざった、こそばゆい感じが(笑

よくぞ、その遥か昔の駄文を読んでいただいて感謝です。
どうぞ、さちサンの身近にも、ステキな何かが起こりますよう、
遠くから祈らせていただきます。
  • POO
  • 2017/06/05 3:33 AM
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